平成22年国勢調査の実施に向けて(2)−漏れなく正確な回答をいただくための新たな取組−

というタイトルで、総務省統計局WEBに統計Today最新号が掲載されました(11月25日)。



「新たな取組」の要点は、国の言葉によれば次の3点です。

  1. 調査票の封入提出方式の全面導入
  2. 調査票の郵送提出方式の導入
  3. モデル地域におけるインターネット回答方式の導入

ところで、特に1番目と2番目の意味、分かります?
実はこれ、これだけでも霞が関の大転換なんですよ!



過去の国勢調査においても、封をして提出したり郵送で提出したりしてきた方は多いと思うんですが、実はそういう提出方法っていうのは、これまでは本来予定してこなかったんです。


もっとわかりやすく言うと、
調査票は書いたら裸で調査員に渡してください
というのが、平成17年調査までは大原則だったんです。



調査員には、受け持ちの調査区にかかる調査書類は可能な限り完璧なものにする役目があり、その一環として、調査票に記入漏れや矛盾があれば、それを記入者に照会して修正などをしなければなりませんでした。
そして、全数調査という物理的な事情からすると、それが最も効率的と考えられていました。


一方、郵送による調査票の提出については制度上予算の手当てがされないため、平成17年調査における我が区の場合は、郵送対応は一切していませんでした。
それが原因で郵便局に大量の調査票が留め置かれ、現場が大混乱に陥りました。




そうしてきた唯一最大の理由は、
「調査の精度確保が最優先であること」
だったんだと思います。




ただし、そのような前提があったが故に、個人情報保護に対する意識が国民全体として希薄だった(と思われる)昭和22年に旧統計法が制定されましたが、制定当時からその統計法内には個人情報保護に関する規定が存在していました。
また、調査員の守秘義務については、身分が国家公務員となる時点で自動的に調査員に備わる義務となります。
ちなみに公務員の守秘義務とは、簡単に言えば「仕事において知り得た秘密は、身内に対しても含めて未来永劫漏らしてはならない」というものです。


つまり、最優先課題を達成するために、制度的な担保もちゃんと整えてはきたんです。国は。




ですから、従来の調査方法を国が頑なに継続してきたのは、
そうした法的整備がなされているという前提に沿って調査を行っていく分には、プライバシー意識への配慮はそれ以上不要である
という発想によるものだとセンサスちゃんは推測しています。







ですが、それってまさに、国が起点の上から目線なんですよね。







そんな国がようやく踏み切った方針転換。


調査票を書いて提出する我々にとっては当然で、遅きに失したともいえるものですが、
霞が関や統計の専門家といったお偉方にとっては、これが国民目線への大転換なんですよ、たぶんこれでも。



そういったことも踏まえながら、以下にも引用(リンク先も含む)した統計Today最新号をぜひ見ていただけるとありがたいなぁ、と思うセンサスちゃんなのです。





さあ、調査日まであと10か月!!


平成22年国勢調査の実施に向けて(2)−漏れなく正確な回答をいただくための新たな取組−



総務省統計局統計調査部国勢統計課企画官 河野 好行



 平成22年国勢調査では、近年の国民意識生活様式などの変化に対応して、調査を正確かつ円滑に実施できるよう、新たな調査方法を導入することとしており、現在その準備を着々と進めています。




■なぜ新たな調査方法を導入するのか


 国勢調査の結果は、衆議院議員小選挙区の画定、地方議会の議員定数の決定、地方交付税の交付額の算定など、政治・行政の法定判断の基準のデータとして用いられるほか、防災対策、地域社会の実態把握、将来人口の推計など、社会・経済の発展を支える情報基盤として様々な分野で広く活用されています。このため、国勢調査の結果は正確で信頼できるものでなくてはなりません。そこで、国勢調査では、日本に住むすべての人(外国人を含む。)から漏れなく正確な回答をいただく必要があります。


 他方、近年の国民の個人情報保護意識の変化、単身世帯や共働き世帯の増加、オートロックマンションやワンルームマンションの増加などに伴い、国勢調査では、調査員が世帯を訪問しても面会できない、あるいは面会できても容易に回答をいただけないケースが年を追うごとに増加しています。

 
 もし今後もこのような傾向が続けば、統計の正確性が低下し、統計の利用に支障を来すおそれがあることから、平成22年国勢調査では、国民のご理解を得て調査を正確かつ円滑に実施できるよう、新たな調査方法を導入することとしたものです。




■新たな調査方法の目指すべきもの


 統計局では、新たな調査方法を検討するに当たって、次のような目標を立てました。

  • すべての世帯から漏れや重複なく正確な回答を得ること
  • 調査票の記入及び提出がしやすい調査方法とすること
  • 国と地方公共団体の密接な連携を通じて円滑に調査を実施すること
  • 調査の円滑な実施のために関係される多くの方々の協力を得ること
  • 限られた人的体制と予算を有効に活用すること


 このような目標を達成するために、統計局では前回の国勢調査が終了して間もない平成18年1月から外部有識者で構成される研究会を開催し、検討を開始しました。また、調査方法を検討するために、試験調査を平成19年20年及び21年と3回にわたって行い、新たな調査方法を実地に検証してきました。この間、統計局と地方公共団体との担当者の間で検討会をたびたび開催し、具体的な実施方法を取りまとめました。新たな調査方法は、このような検討を経て出来上がったものです。




■新たな調査方法の主な特徴


新たな調査方法には、次のようないくつかの特徴があります。


(1)調査票の封入提出方式の全面導入
 従来、国勢調査では、調査票の記入の漏れや誤りを防ぐため、世帯で記入された調査票を調査員が回収する際に、原則としてその場で調査票の記入内容を点検することとしてきました。しかし、調査員に記入内容を見られたくないと考える世帯が増えてきたことから、平成17年国勢調査では、世帯が調査票を封筒に入れて提出できることとしました。その場合、調査員は調査票の記入内容を一切見ずに市区町村の役所に提出することとしました。その結果、半数近くの世帯の方々が調査票を封入して提出されました。

 平成22年国勢調査では、これを更に一歩進め、すべての世帯に調査票を封筒に入れて提出していただく方式を導入することとしました。ただし、世帯が調査票の記入誤りがないか、調査員による確認を希望される場合にはその限りではありません。

 なお、調査票は提出後に市区町村の庁舎において内容の検査が行われ、もしも記入漏れなどがある場合には、世帯の方にお尋ねすることもあります。封入提出方式の導入に伴って、統計の正確性・信頼性が低下することのないよう、世帯の皆様におかれましては、従来にも増して、正確な回答をご提供いただくようお願いいたします。




(2)調査票の郵送提出方式の導入
 平成17年国勢調査では、単身世帯や共働き世帯などの不在世帯の増加により、調査員が訪問しても、面会できない世帯が増えました。また、個人情報保護意識の変化に伴い、調査員に調査票の記入内容を見られたくないと考える方も増加し、調査員が世帯から調査票を直接回収しにくい事例も増加しました。

 このため、平成22年国勢調査では、調査票を封入して調査員に提出していただく方法のほかに、世帯が希望される場合には、郵送により調査票を提出していただくこともできることとしました。これにより、不在がちな世帯や、顔見知りの調査員に調査票を提出したくない世帯では、調査員の来訪を待たずに、調査票を提出していただくことが可能となります。この方式の導入に当たっては、地域によって郵便事情や居住環境なども異なることから、市区町村がその地域特性に応じて、提出方法(調査員又は郵送)を推奨することができることとしています。

 なお、調査票の提出には郵送方式も導入しますが、調査票の配布は、従来どおり調査員が世帯を訪問して行うこととしています。これは、国勢調査では、世帯の方々がそれぞれの場所に居住されている実態があるかどうかを確認する必要があるためです。




(3)モデル地域におけるインターネット回答方式の導入
 近年のインターネットの急速な普及に対応して、平成22年国勢調査では、家庭のパソコンから手軽に回答が行えるよう、一部のモデル地域において、インターネットによる回答方式も選べるようにすることとします。インターネット回答方式は、利便性が高く、また、入力された回答がコンピュータ上で即時にチェックできることから正確性の向上にも役立つものです。

 インターネット回答方式には、このようなメリットもある半面、システム・ダウンのリスク対策やパスワードの厳格な管理など、紙の調査票には無い課題もたくさんあります。このように未経験の課題も多いため、インターネット回答方式をいきなり全国規模で導入すると予見できないトラブルが発生するリスクもあることから、平成22年国勢調査では、将来の本格導入に備えて一部のモデル地域で先行的に導入することとしました。モデル地域は、インターネットの普及率が高く、インターネットになじみやすい若年単身世帯や共働き世帯の多い地域の中から、国から支援を行いやすい地理的な要素も加味して選定する予定です。







■安心して回答していただくために

 平成22年国勢調査では、上記のほかにも様々な新たな取組を予定しています。


 その一つにコールセンターの設置があります。これまで国勢調査では、調査票の記入方法などに関する多数の問い合わせが、調査を実施する市区町村、都道府県、国の担当部署に寄せられていました。平成22年国勢調査では、その数は百万件以上にも上ると推測されています。このような多数の問い合わせに効率的にお答えするため、平成22年国勢調査では初めて一元的な窓口としてコールセンターを設置します。


 国勢調査に関するお問い合わせは10月1日前後の期間に集中しますが、この時期には、市区町村、都道府県、国の担当部署では実地調査の業務で多忙を極めます。そこで、電話照会にはコールセンターが応対することにより、より迅速で丁寧にお答えできるほか、限られた数の担当職員が、実地調査に専念して取り組むことが可能となります。


 もう一つの新たな取組の例として、調査員の身分証明の強化も予定しています。平成17年国勢調査では「かたり調査」や調査票の詐取事件など、調査の円滑な実施を妨げる事態が発生しました。また、昨今では高齢者の方を狙った「振り込め詐欺」なども横行しています。世帯の皆様にとっては、国勢調査の調査員が来訪した場合に、調査員かどうかを確実に見分ける必要性が高まっています。


 このため、平成22年国勢調査では、世帯の皆様が、確実に調査員を確認することができるよう、初めて調査員証に顔写真を貼付することとしました。これにより、人物の同一性の公証力を高め、身分証明の強化を図ることとしています。この調査員の身分証明を強化することは、「かたり調査」や調査票の詐取事件を防止する観点からも有効な方法と言えます。また、平成21年4月から全面的に施行が開始された統計法では、「かたり調査」の禁止規定が設けられています。これにより、国勢調査を始めとする国の基本的な調査と紛らわしい表示や説明をして情報を得る行為を禁止し、違反した者への罰則も規定されています。




■おわりに

 以上述べたのは、平成22年国勢調査における新たな取組の一部です。統計局では、都道府県、市区町村と密接な連携を図りながら、正確な調査を実施してまいります。国勢調査の成功には、世帯の皆様に国勢調査の趣旨を十分にご理解いただき、正確に記入された調査票を、期限内に提出していただくことが大切です。皆様におかれましては、平成22年国勢調査の重要性をご理解くださいますよう、重ねてお願い申し上げます。


[追記091218]
この件に注目したブログエントリを発見しました。ネット回答の導入について特に突っ込んでいて興味深いのでご紹介しておきます。
Garbagenews.com「総務省、国勢調査でインターネット回答方式を一部試験導入へ」



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国勢調査担当者センサスちゃんのつぶやき written by センサスちゃん