千三つでいいのか!?〜膨大な人件費を使って調査員を大量投入する理由。

「千三つの法則」、これは広く知られている言葉です。
文字どおりに訳せば「1000回チャレンジしても成功するのは3回」ということですが、これはまさにこうした調査ものにも当てはまる話です。


そして結論を言えば、「回収率100%が求められるこうした統計調査で、
留置き調査以外の方法はあり得ない」ということです。
ただし、「現状では」という断り書きは入りますが。



そもそも、市場調査や社会調査とは性質が異なるのが、この国勢調査をはじめとした各種の(基幹*1)統計調査です。
これをたとえば郵送調査で行うと、「千三つ」こそ大げさですが回収率は3割そこそこと言われてますから、そもそも調査そのものの意味をなし得ません。


参考までに、社会調査における調査方法別の特徴や長所、短所について簡潔にまとまっているページがあるので、そこから郵送と留置きについて抜粋してご紹介。

2.留め置き調査
 調査員が調査票を持参し、自記式(対象者が調査票に自分で回答を記入する方式)で回答してもらい、調査員が後日、調査票を回収する(調査員は回収時に記入内容をチェックする)。

  • 長所
    • 回収率は高いが(80%程度)、代理記入が発生する危険性があり、実質的な有効回答率は面接法よりも低い。
    • 対象者との面接時間を確保するのが困難な場合でも、調査が可能である。
    • 調査員を十分に確保できない場合でも、調査が可能である。
  • 短所
    • 対象者が記入したのか確認することが困難である。
    • 三者の意見に影響されることを排除できない。


3.郵送調査
 調査票を郵送する調査。どの段階を郵送とするかにより、以下の3通りがありうる。

  1. <調査票を対象者に郵送し、回収時に面接・内容確認をする>
  2. <対象者と面会して協力を依頼するとともに調査票を渡し、記入後の調査票を郵送してもらう>
  3. <調査票の送付も回収も郵送による>
  • 長所
    • 対象者が地理的に非常に分散している場合でも、調査が可能である。
    • 対象者と面接するのが困難な場合でも、調査が可能である。
    • 調査員を十分に確保できない場合でも、調査が可能である。
  • 短所
    • 対象者が記入したのか確認することが困難である。
    • 三者の意見に影響されることを排除できない。
    • 一般に回収率が低い(30%程度)。
    • 調査期間に時間的ゆとりがない場合、実施が困難である。
    • 調査票の内容が複雑な場合、実施が困難である。
    • 回答が不正確になりやすい。
  • 主な注意点
    • 事前に調査協力依頼状を郵送しておく。
    • 調査票を郵送する場合、週末に届くようにすると読んでもらえる可能性が高まる。
    • 対象者には、挨拶状・調査票・謝礼品・返信用封筒を一緒に渡す。
    • 催促状を出す(必要に応じて数回)。


留置き調査の短所として挙がっている「対象者が記入したのか確認することが困難である」点、ここは統計法と国勢調査令によりカバーすることを担保している、といった仕組みです。
そして、「第三者の意見に影響されることを排除できない」点については、調査の内容が意見聴取ではなく客観的事実の調査なので、考慮する必要がないというわけです。


そうは言っても虚偽回答の懸念までは払拭されないわけですが、これについては統計法に罰則が定められています。





民間で行う場合においても、郵送調査と比較した場合における留置き調査の優位性は当然認識されているわけですが、いかんせんコストがかかりすぎてしまうため、どうしても留置き法による調査はできません。


しかしだからこそ、「いかにして郵送法の精度を上げるか」という研究試行錯誤が盛んになされていることも事実です。
このことが前記の「現状では」という断り書きに結びついています。国も自治体も看過せず、あらゆる角度から国勢調査の信頼性を確保する努力をしなければいけません。



ただいずれにしても、国だからこそできる、それが調査員を大量投入しての留置き調査なのです。


  • -

国勢調査担当者センサスちゃんのつぶやき written by センサスちゃん