「センサスの基本的特徴は、小地域あるいは小グループの人口に関する統計を誤差なく、あるいは最小限の誤差で提供することにある。」〜センサスの本質的役割3


ちょうどこのことについて話をしようとしたところで、3/10のTwitter上にこんなPostが。



これはまさに、掲題の意義と同じことを言っています。



なので、それを発見したセンサスちゃんはすかさずこういう返しをしました。






該当部分の国連勧告*1は次のとおりです。

1.2(c) The basic feature of the census is to generate statistics on small areas and small population groups with no/minimum sampling errors.*2 While the statistics on the small areas are useful in their own right, they are important because they can be used to produce statistics on any geographical unit with arbitrary boundaries. For example, in planning the location of a school, it is necessary to have the data on the distribution of school-age children by school area, which may not necessarily be equal to the administrative area units. Similarly, small area data from the census can be combined to approximate natural regions (for example, watersheds or vegetation zones) which do not follow administrative boundaries. Since census data can be tabulated for any geographical unit, it is possible to provide the required statistics in remarkably flexible manner.*3 This versatile feature of the census is also invaluable for use in the private sector for applications such as business planning and market analyses;


ここで言っている「on small areas and small population groups with no/minimum sampling errors.=小地域、小グループの統計を誤差なく、あるいは最小限の誤差で捉える」ことこそが、国勢調査が全数調査であることの意義であるわけです。


全国規模の標本調査の結果を切り出して市区町村の施策に生かす、というのは、ちょっと誤差が大きすぎて無理があります。
そして、そういう粗いサンプリングによる標本調査は、やはり集計結果も都道府県レベルまでしか公表されません。



一方、国際的には人口センサスと同等に位置付けられている住宅センサスは、日本では「住宅・土地統計調査」として標本調査で行われていますが、市区町村レベルまで推計して集計できるよう、サンプリングを細かくしています。
ただ、日本で住宅センサスを標本調査として可能ならしめているのは、住戸(「住環境」ではなく、あくまで「建物」)に関しては他国に類を見ないほど充足度が高いこと、そして、サンプリングのベースとなる国勢調査の精度が高いことにあるわけですね。



つまり、全数調査であって初めて、コミュニティ単位あるいは市区町村の自治事務における利用に堪え得るものとなるわけです。


そしてさらにはこのことにより、「Since census data can be tabulated for any geographical unit, it is possible to provide the required statistics in remarkably flexible manner.=行政区画にとらわれない任意の境界による集計、利用が可能になる」ってことが、実は研究機関や民間セクターにとってたいへんに重要なことであるわけです。




こうしたことは裏を返せば、
国勢調査を拒否したり、調査票にウソを書いたりすることは、データの崩壊→分析研究結果(セクター不問)や国の他の統計調査の崩壊、そして地方自治の崩壊にも直結することを意味します。



先日紹介した第1回国勢調査の標語「一人の嘘は万人の実を殺す」とは、まさにこのことを指して言っているのです。





[勧告引用訳*4

1.2(c) センサスの基本的特徴は、小地域あるいは小グループの人口に関する統計を誤差なく、あるいは最小限の誤差で提供することにある。小地域統計はそれ自体有用であるが、重要なのは任意の境界の地理的単位上の統計を作成できることである。例えば、学校の場所を計画する際、必ずしも行政的な地域単位と同じとは限らない学校地区別の子どもの人口分布のデータが必要となるであろう。同様に、行政区画に捉われない、天然上の地理的単位の統計も作成可能である。このように、センサスデータはどのような地域単位にも集計できるため、非常に柔軟に必要な統計を提供することができる。センサスのこの特徴は、ビジネスの計画や市場分析といった民間部門での利用上もまた貴重なものである。

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国勢調査担当者センサスちゃんのつぶやき written by センサスちゃん


*1:http://unstats.un.org/unsd/demographic/sources/census/docs/P&R_Rev2.pdf page5

*2:例によって太字装飾はセンサスちゃんによるものです。

*3:同上。

*4:http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/pdf/j_census.pdf